Eagle Eye Networks

クラウドVMSシステムの動向と戦略

3月 14, 2019 Sheri James

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イーグルアイネットワークス社創業者兼 CEOディーン・ドレイコ

今や世界のビジネス界ではクラウド・コンピューティングの導入率が高まり、クラウド・ベースの物理セキュリティ・アプリケーションの導入を検討する組織が増えていますが、約5年前までは考えられないことでした。

日本においてもクラウドの採用は急速に進んでいます。調査会社IDCジャパンによると、パブリック・クラウド・サービス市場規模は2018年で45億ドル、前年比29.8%増と予測しています。プライベート・クラウド・サービスの市場規模は2018年で28億5000万ドル、前年比44.8%の増加となったと予測しています。予測値を支えているのは、日本の中小企業によるクラウド・サービスの採用の増加です。日本のクラウド・サービス市場の拡大は、ICT(情報通信技術)基盤への民間および公共による直接的な投資の成果であり、政府によるクラウド・サービスへの意思表示といえるでしょう。

https://www.export.gov/article?id=Japan-Cloud-Computing

クラウド・コンピューティングを可能にするのは仮想化であり、これは物理的なハードウェア機能をソフトウェア・ベースでの実現を可能にしました。しかし仮想上のソフトウェアは、ソフトウェア上での互換なのか、ハードウェア上での互換であるのか、判断することはできません。 過去60年間のITの進歩は、仮想化のメリットというより、定量的なメリットの範囲にすぎないということです。

https://www.networkworld.com/article/3234795/virtualization/what-is-virtualization-definition-virtual-machine-hypervisor.html

■仮想化のメリット
コンピュータの世界における仮想化の初期のアプリケーションはサーバ・コンピュータの仮想化で、VMware社とマイクロソフト社がサーバ仮想化ソフトウェアの提供を二分化していました。一般的な企業のWindowベースのサーバは10%未満の使用率で動作し、約500 Wの電力を消費します。仮想化を使用すると、1台のハードウェアを6台のサーバとして容易に機能させ、さらにサーバの耐用年数を短縮することなく、たった550Wの消費で60%の使用率で実現することができます。つまり、必要な物理サーバは6分の1になります。今日の高性能なサーバでは、最大12台の一般的な物理サーバを仮想上で実装することが可能です。これらは現実的で、実現が容易なだけでなく、コスト削減にもつながり、データセンターにとって仮想化はとても魅力です。

■VMSサーバの仮想化
サーバ仮想化の成功にヒントを得て、組織のデータセンターでセキュリティ・カメラのVMS(映像管理ソフトウェア)システムをホストしている組織もあります。これは、ネットワーク帯域の増加によるコストと仮想化によるコスト削減を実現します。一般的なビジネス・サーバとは異なり、ほとんどの映像記録サーバは60%以上のディスク/CPU使用率で動作します。使用率が高いということは、1台の高性能データセンター・サーバであれ、せいぜい2、3台のオンプレミス映像記録サーバ分の置き換えにしかならないということです。置き換えることができるということです。

映像記録サーバのデータセンター仮想化は、サーバの総コストを削減となるももの、データセンターでのVMSの導入では、仮想化が得意とするすべての利点を十分に活用することができません。今日、クラウド・コンピューティング・テクノロジは、サーバ仮想化をはるかに超える高度な仮想化機能を実装しています。クラウド・コンピューティングは、物理的なサーバの仮想化により、物理的に個別のサーバのCPUやメモリ、データストレージやネットワーキングに置き換えられました。これらのリソースは、クラウド・データセンター内では共有で利用されていますとして。これにより、クラウド・コンピューティング用に構築されたソフトウェア・アプリケーションが、必要に応じてコンピューティング、メモリ、ストレージ、ネットワークリソースの利用が可能となり、必要なリソースのみが数時間または数分で消費されます。 これにより、コストを削減し、信頼性を高めることができます。

これとは対照的に、VMSでは、物理サーバまたは仮想サーバともに、VMSが常に最大限の処理とストレージ、ネットワーク要件を発揮できる要件を備える必要があります。そのため、仮想VMSサーバであっても、実質的には最大限のシステム利用率を活用することはないにしろ、ある程度の容量を備える必要があります。そのためクラウドベースのVMS製品を、データセンターの物理サーバ・仮想サーバに導入されたクライアント・サーバVMSシステムよりも魅力的に、そして多くの場合より手頃な価格で提供する理由です。

■クラウドの特性
ISO/IEC 17788、Cloud Computing Overviewand Vocabularyでは、クラウド・コンピューティングを6つの重要なクラウド特性が示されています。これらの特性は、オンプレミスまたはデータセンター・システムを実現するより、ハイパフォーマンスのアプリケーションをより手頃な価格で利用できることが示唆されています。

オンデマンド・セルフサービス
ユーザはアプリケーションにアクセスし、必要に応じてサーバの時間やネットワーク・ストレージなどのクラウド・プラットフォームやインフラリソースを、各サービス・プロバイダやマンパワーなしに自動的にプロビジョニングができます。

ブロード・ネットワーク・アクセス
クラウド・サービス機能はネットワークおよびインターネット経由で利用可能であり、携帯電話、タブレット、ノートPC、ワークステーションなどの標準的な方法でアクセスします。

リソース・プーリング
クラウド・サービス・プロバイダのコンピューティングリソースは、マルチ・テナント・モデルを利用して複数ユーザにサービスを提供するために共有化され、さまざまな物理リソースと仮想リソースが顧客の需要に応じて動的に割り当て・再割り当てされます。

マルチテナンシー
クラウド・サービスのリソースは、複数の顧客でアロケートされ、データについては互いに切り離されており、相互にアクセスできないよう割り当てられ、一顧客の利用が、他の顧客のパフォーマンスに影響を与えることはありません。

迅速で弾力性のあるスケーラビリティ
クラウド・サービスのリソースは、ストレージ、プロセッサ、メモリ、ネットワーク帯域などのリソースをすばやく拡張できるよう、状況に応じて自動的で、迅速かつ弾力的に活用することができます。クラウド・サービスのユーザにとって、プロビジョニング(必要に応じてインフラなどのリソースを提供できるよう事前に予測し、準備すること)に利用可能な物理的または仮想的なリソースは、無制限にで、サービス契約上、いつでも自動的に任意の数量で購入することができます。

計測サービス
クラウド・サービスの提供は、利用状況を監視、管理、レポート、請求することができるというものです。これは、提供されるクラウド・サービスを最適化に必要な重要な機能であり、その目的は、ユーザが利用するリソースに対してのみ課金される必要があります。これらの特性により、単一のクラウド・アプリケーション(例えば、Google Mail、Twitter、Line、FacebookおよびSalesforce)を数千万もの加入者が利用することができるようになります。
継続的なデリバリー

クラウド・アプリケーションは、Continuous Delivery(継続的な配信)と呼ばれるソフトウェア・エンジニアリング方法論を利用して開発されています。これは、ソフトウェアを継続的に少しずつ構築、改善、検証、配信するアプローチです。そのため、クラウドのお客様は常に最新バージョンのソフトウェアを利用しています。最新バージョンのソフトウェアは、ユーザやサービス提供外車によるアクションを必要とせず、自動的にクラウド内に維持されます。 これにより、信頼性が高く・セキュアなアプリケーションが生まれます。

■クラウド・エンジニアリング映像管理システム
クラウド・システムのエンジニアリングは、サーバ・ベースのアプリケーションのソフトウェアやエンジニアリングと大きく異なります。なぜなら、これまで提供が困難であったシステムを提供するために、クラウド・ベースのサービスが人々の生活や組織の運営を変革し続けているからです。 全ての業界のテクノロジは、クラウド・コンピューティング機能により変革しています。
クラウド・コンピューティング技術によって、クラウド・サービスのリソースをセキュリティ監視カメラのVMSシステムの可変するデマンドに合わせて、に柔軟に適用できるように、丹念にチューニングすることが可能になります。高性能のクラウドVMSシステムは、エンドユーザの作業を大きく改善し、サブスクリプション・ベースのマネージドサービス・モデルは、VMSシステムの効果的な構築、テスト、管理を強力にサポートします。

 

■クラウドVMSシステムの利点
クラウドVMSシステムは、オンプレミスまたはデータセンター・システムに比べて次のような利点があります。

総所有コストの削減
クラウドVMSデータセンターは、経済性に富み、なおかつインフラが映像管理に特化して設計・構築されているため、オンプレミスでの導入、またはユーザやサードパーティ・データセンターでの導入よりもユーザあたりのコストを抑えることができます。利用者間で共有することにより、ハードウェアを最大限に活用できるだけでなく、電力コスト、ITスタッフのコストを削減します。オンサイトアプライアンスによるセットアップを削減することで、初期費用も抑えられ、カメラの映像ストリームを受信してクラウドVMSシステムに送信・バッファリングを実現する低コストのオンサイト・アプライアンスのセットアップ費用で構成されています。

冗長性と信頼性
全てのコンピューティング、ストレージ、ネットワーク機器すべての冗長性(ホットスタンバイ)は、オンプレミスおよび一般的な防犯カメラシステムでは手頃に抑えることが困難です。ただし、高度なクラウド・コンピューティング・テクノロジと広く共有されているインフラの共有によるコスト削減により、クラウドVMSデータセンターではすべての冗長性を手頃な価格で実現することができます。

技術的な意味での「寿命」
従来のVMSシステムは、老朽化するまでの時間が比較的短いです。導入当初は堅牢な機能であったのかもしれませんが、それらの主力な機能セットはハードウェア購入時にある程度特定されており、ハードウェアのアップデートができない場合もあります。今日の急激なテクノロジの進歩により、固定のハードウェアは急速に陳腐化しています。対照的に、クラウド仮想化とは、クラウドVMSデータセンターのハードウェアをいつでもアップグレードまたはリプレースできるため、クラウドVMSシステムは技術的に最新の状態に保たれます。

強力なサイバーセキュリティ
コストの共有と最新テクノロジによるクラウドVMSシステムの利点は、クラウドVMSのサイバーセキュリティ機能にも当てはまります。 定期的なペネトレーションテストをはじめとする、堅牢なサイバーセキュリティ対策と実施には、クラウドVMSシステム・データセンターでは手頃な価格で技術的に実現可能ですが、オンプレミスまたはデータセンターのVMSシステムでは実現することが困難です。

高いユーザビリティ(使い勝手)
効率的に設計されたクラウドVMSシステムには、メインのクラウドVMS 用Webアプリケーションだけでなく、最新のモバイル専用アプリが含まれるため、ユーザは自分のコンピュータ、またはモバイル機器がインターネットに接続されていれば世界中どこでもVMSへ容易にアクセスすることができます。クラウドVMSシステムの利用者は、追加のソフトウェアをインストールする必要がなく、ボタンをクリックするだけで映像解析などの機能を有効にすることができます。

■クラウドVMSシステムに求めるべきもの
クラウドVMSシステムを選択時に確認すべき12項目があります。

  1. カメラの選択

あらゆるカメラサポートには、クラウドVMSシステムのオンサイト・アプライアンスが「ONVIFプロファイルS」に対応していることを確認してください。また、クラウドVMS用カメラの互換性リストも確認してください。これには、テスト済みのカメラ・ファームウェアのバージョンとともに、1,500を超えるテスト済みのカメラが含まれているはずです。このリストでは、音声サポートと、360度または180度のパノラマビュー、フィッシュアイビュー、マルチビュー・ストリームを備えたカメラのサポートを識別する必要があります。

  1. インターネットが切断した場合の記録

オンサイト・アプライアンスが2日間のビデオ・バッファリングをサポートし、利用可能なインターネット帯域を考慮して、共有するクラウドVMSシステムへの情報の転送できることを確認してください。ローカルでの記録が利用できる場合もあります。

3. データの暗号化
256ビットのAES暗号化は、ローカルでバッファされた映像、ローカルで記録された映像、およびクラウドで記録された映像に適用する必要があります。

4.データセンターの場所
データセンターの場所は、データ保護とデータ・プライバシーの考慮事項がどのように対処されているかとともに指定する必要があります。

5. クラウド・ストレージの冗長性
記録映像は、完全に冗長な映像ストレージを使用して、損失から保護される必要があります(3重冗長が最適)。

6.クラウド・データセンターの所有権
独自のデータセンターを所有することで、クラウドVMSシステムプロバイダは、データセンターインフラが高性能の映像記録および監視用に設計・運用されていることを確認することができます。

  1. 強力なサイバーセキュリティ

オンプレミス機器は完全にクラウド管理され、カメラのマルウェアによる攻撃を防ぎ、感染している可能性のあるカメラによる外部への通信を防ぐファイアウォール機能を備えている必要があります。クラウドVMSシステムのアプリケーションには、二要素認証を提供する必要があります。その防御は強力なペネトレーションテストによって定期的にチェックされなければなりません。

  1. 第一応答者の映像共有

インシデント対応を最大限にサポートするために、安全で管理が容易な選択されたライブ映像および既得映像へのアクセスを提供する必要があります。

9. システムパフォーマンスメトリクス
システムパフォーマンスは、ダウンロード可能な棒グラフと、カメラLANパケット・ロス、カメラLAN帯域利用量、インターネット帯域利用量、およびオンサイトアプライアンスのバッファ利用量を含む、折れ線グラフを使用して追跡する必要があります。

10. 自動オフライン・カメラ回復

カメラがオフラインになると、オンサイトのバッファリングまたは記録機器は自動的にカメラ接続を再開するための手順を行います。これには、カメラの再起動や、カメラがオンラインに戻らない場合の手動電源再投入のアラートの発報などを含みます。

11. 統合されたAPI

クラウドVMSシステムは、物理的なアクセス・コントロール、コマンドセンターの監視、小売店の監視、店舗のフランチャイズ管理など、他のシステムと統合するための安全なAPIを提供する必要があります。

12. 信頼のできる販売代理店

クラウドVMSシステム・サービスを含む映像監視サービスを提供する知識豊富で役立つ親切なディーラー(販売代理店)を見つけてください。

■筆者紹介

ディーン・ドレイコ氏は、世界最大のクラウド・ベースの映像監視会社であるイーグルアイネットワークス社創業者。同氏は、他にも複数の優れたセキュリティ関連企業を設立。またイーグルアイネットワークス社だけで無なく、クラウド・ベースのアクセス・コントロール企業Brivo社のオーナ兼会長でもある。ドレイコ氏はかつてバラクーダネットワークス社)の創設者兼社長兼CEOとして、業界初となるメールセキュリティアプライアンスや様々なサイバーセキュリティ製品を開発した。同氏はミシガン大学アン・アーバー校電気工学科学学士号、カリフォルニア大学バークレー校電気工学科学修士号を取得。金融グループのゴールドマンサックスはディーン・ドレイコ氏を「2014年の最も魅力的な起業家100人」の一人として挙げた。

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